みかんいろの月

Kis-My-Ft2の横尾さんがダイスキデス。

凍原を行く人

横尾さんのお仕事は、歌番組も、料理関係も、動物関係も、もちろんみんな嬉しいけれど、俳句のお仕事はまた格別な思いがあります。「料理ができるアイドルはカッコいい」という概念は、SMAPさんが作ったものだと思うし、動物とアイドルの組み合わせは、当然かわいいに決まってる。でも「俳句ができるアイドルはカッコいい」という概念は、横尾さんが作ったものだと思うんです。

 

9月に特待生1級に昇格して、芸能界で3番目に俳句が上手い人になった横尾さんが、約3カ月ぶりの出演となったプレバト!!で詠んだ俳句。

 

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2016.12.8 お題「雪の列車」

 

凍原を 抜け来し名残 列車着く

 

季語:凍原(冬)

抜け来し…抜けて来た。「し」は過去の助動詞「き」の連体形。

 

いつも思うのですが、私が横尾さんの俳句の好きなところは、1枚の写真から広げる発想力。雪の中を列車が走っているというその一場面だけでなくて、「抜け来し」という言葉で、たいへんなところをやっとの思いで走ってきたという、ここに至る前の時間を感じさせます。

「凍原」という言葉は聞き慣れなかったので、久しぶりに大辞林を引っ張り出して引いてみましたが、「ツンドラ」とだけ書いてありました。地理用語として使っているわけではないので、ここは漢字の通り「凍った原っぱ」なのでしょう。「凍原」という語や、古語の助動詞は、普段使う言葉ではないから、きっと辞書や歳時記を引いて勉強したのだと思います。過去の助動詞「き」は、連用形に接続するから「来し」は「きし」と読むはずなのに、なぜか「来」に接続する時だけは未然形に接続して「こし」と読むというひっかけ問題みたいな助動詞なんですけど、間違えなかったから、本当によく勉強しているのだと思います。

俳句披露の時に横尾さんは「ここに住んでいる人たちは、もっとたくましく生きてるんだなと、僕も東京に帰ったらもっともっとがんばって、成長しようって」とおっしゃっていたので、もしかしたら、お題をもらって、この光景を実感するために、雪国まで行ったのではないかとふと思いました。もしそうだとしたら、そのひたむきさに胸打たれるし、そうでなかったとしても、列車の写真を見て、そこに住む人に思いを馳せたうえで、もう一度戻って列車のことで詠んだ横尾さんの心の在り方にやっぱり胸打たれます。

 

結果は現状維持。夏井先生の評価は「映像が描けていない」と。でも先生から「あなたの想像力はあと一歩で名人に手が届きます」とほめていただきました。

 

11月30日発売のTVガイドに横尾さんと夏井先生の対談が載っていて、興味深く読みました。夏井先生に「あなたたちがこうして真剣に俳句に取り組んでいる姿を見て、私の句会ライブに来てくれている小学生たちがカッコいい!って言うわけですよ。こういう句が詠める横尾さんがカッコいいって」と言われて、日ごろ「子どもたちのヒーローになりたい」とおっしゃっている横尾さんは、どんなに嬉しかったことかと思います。

 

今回のお題写真は、もうレールも見えないほど雪が降り積もった野原を行くオレンジ色の一両の列車。それが、アイドルが俳句を作るという道なき道をゆく横尾さんに重なりました。TVガイドの対談でも「逆に俳句がわからなくなってきて」とおっしゃっていた横尾さん。でもこの凍原を抜けたら、きっと花咲く未来がある。「カッコいい」の新しい地平を切り拓く横尾さんが、どこまで俳句でカッコよくなるのか、楽しみです。