みかんいろの月

Kis-My-Ft2の横尾さんがダイスキデス。

同じ時代を生きている奇跡 ―――7月25日横尾さんの俳句に寄せて

横尾さんがプレバトに出演する日は、残業があろうが飲み会に誘われようが、万難を排してテレビの前に座ることが生きがいとなっている私ではありますが、今回の炎帝戦は、どうしてもどうしても避けられない泊りがけの出張があったのです。泣く泣くリアルタイム視聴を諦め、夜の仕事が終わるや否やツイッターで結果をチェックし、出張から帰ってすぐ録画を見ました。

 

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2019.7.25 お題「波紋」

父語る 敬遠五つ 夏の雲

 

炎帝戦 5位

季語:夏の雲(夏)

敬遠…表面は敬う態度で、実際にはかかわりを避けること。転じて、野球用語で打者との勝負を避け、故意に四球を与えること。

夏の雲…夏の空に現れる雲。積雲、積乱雲など。

 

 

前回の「ひまわりや」に引き続き、横尾さんの詩情を深く感じました。テレビに松井選手が映るたびに「高校時代の松井はなぁ、すごかったんだぞ」と五敬遠のエピソードを語る父。中学高校生ぐらいになると父と会話することも少なくなって、そんな他愛のないエピソードを甲子園の季節が来るたびに思い出す…。そんな父親と息子の関係を感じる美しい俳句だと思います。横尾さんがこの俳句を作ったのは、おそらくツアー真っ最中で、ソロ曲「キャッチボールをしよう」に込めたお父さんへの想い、野球への想いが、さらに俳句へと昇華した、今の横尾さんにしか詠めない俳句だと思いました。

 

私がプレバトの夏井いつき先生を知ったきっかけは、今から10年以上前に、本屋でたまたま見つけた「絶滅寸前季語辞典」を購入したことです。季節感や風習が変わってしまって意味が通じなくなってしまった季語を解説し、その季語を使って一句詠むというもので、夏井先生の軽妙な語り口のおかげで俳句に親しみを感じると同時に、生まれては消えていく言葉のはかなさ、繊細さに胸打たれました。横尾さんの「敬遠五つ」という中七に、私はすぐ、松井選手が高校時代に甲子園で1試合に5回敬遠されたエピソードを思い浮かべることができたけれど、松井選手が現役を引退した今となっては、この言葉の意味が通じない人もこれから増えていくのだろうなと思います。だからこそ、「敬遠五つ」の七音で松井選手の偉大さや、あの夏の喧騒を一気によみがえらせる横尾さんの言葉の使い方に感心するし、横尾さんと同じ時代を生きて、同じ言葉を使って、同じエピソードを共有できる奇跡に喜びを感じます。

 

今回の出張は、陸の孤島みたいなところに閉じ込められて、テレビもなく、仲良く話せる人もいなくて本当にきつかったのですが、横尾さんの俳句に「同じ時代を今生きてるこの奇跡」*1を感じ、勇気をもらって乗り切りました。結果は10段の名人4人には及ばなかったものの、名人4段の地位に恥じない5位。遠く離れたキラキラした世界で活躍する横尾さんに、何度でも敬意を表します。

 

絶滅寸前季語辞典 (ちくま文庫)

絶滅寸前季語辞典 (ちくま文庫)

 

 

*1:Kis-My-Ft2「Mr.Star Light」