みかんいろの月

Kis-My-Ft2の横尾さんがダイスキデス。

この時代のチャンピョン ―――1月3日横尾さんの俳句に寄せて

横尾さん、プレバト冬麗戦優勝おめでとうございます!!

 

横尾さんがプレバトの俳句査定で特待生に昇格して早4年。四季のタイトル戦は、11回を数えましたが、毎回上位にはつけるものの優勝はまだなく「無冠の名人」と呼ばれる横尾さん。今回は、予告で千賀さんと北山さんは泣いているし、ナレーションは「意外な優勝者」って言うし、どんどん優勝候補の他の名人が脱落していって、最終的に優勝と最下位の発表が残されるしで、口から心臓が出そうになりながら番組を見ていました。

 

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2020.1.3 お題「お鍋」

 

庖丁始 都心は 計画運休

 

冬麗戦優勝

季語:庖丁始(新年)

庖丁始(ほうちょうはじめ)…その年初めて庖丁を使うこと。俎始(まないたはじめ)とも言う

計画運休…台風や大雪などによる被害を小さく留めるために、交通機関が事前に予告して運行を休止すること

 

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正直に言うと、披露された最初の印象は「!?」。ちょっと面食らいました。これだけレベルの高い冬麗戦の中での優勝だったので、どれほど華やかで、大仕掛けの俳句なのかと思っていたから。使われている言葉は分かりやすくて生活感のある言葉だし、文字数は俳句としてどうなのかすぐにはわからなかったんです。でも読み返せば読み返すほど、横尾さんらしい俳句だと思いました。

 

まずは音数。東国原さんがおっしゃったとおり、横尾さんが五七五の定型を崩すのは珍しいこと。上位入賞ではなく、優勝を目指した思い切った挑戦だったのだと思います。俳句の音数って一筋縄ではいかなくて、過去にも「夏の雲ぼくら日陰探検隊」では17音なのに、「タンケンタイ」という音を考えて「ぼくらは」にした方がよいと添削されるなど、何度か注意されてきたので、単なる音の数だけでなく、響きや流れをよく考えた上での表現なのだと思います。夏井先生もおっしゃったとおり、「庖丁始」と7音使ったのなら、残りは七五で整えるのが定石。でもそうせずに、七四八のごつごつしたリズムにしたことで不思議と耳に残ります。「ホーチョー」「ウンキュー」という伸ばして発音する言葉と「ハジメ」「ケイカク」というカクカクと発音する言葉を組み合わせているのも、不思議なリズムを作っている要因だと思います。

 

そして「庖丁始(ほうちょうはじめ)」という季語。「水回りの横尾」「キスマイの料理番長」の異名を持ち、マグロ解体師1級である横尾さんにとってこれ以上ふさわしい新年の季語はない。普通は「包丁」ですが、常用漢字外の「庖」(くりや=台所)の字を使ったのもきっとこだわったのだと思います。新年初めて料理をすることは、私の季寄せでは、「俎始(まないたはじめ)」が本題(タイトルにある言葉)で、「庖丁始」は傍題(関連のある言葉)になっているので、おそらく俳句の世界では「俎」の方がポピュラーではないかと思うのですが、「庖丁」にしたのは「Edge(刃)of Days」と掛かっているのではないかとちょっと思いました。

 

そして「計画運休」という言葉。台風や大雪を予測して、交通機関が前日に運休を発表するようになったのってここ数年のことなので、既成の俳句にない、新しい発想だと思います。そして、「庖丁始」と「計画運休」の取り合わせ。子どもの時、台風で学校が休校になると嬉しかったことを思い出しました。大人になると会社が休みになったとしても、翌日2倍働くだけだし、台風の被害も心配だし、喜ぶのは不謹慎なんだけど、それでも急にできた休みってちょっと特別な感じ。でもその空いた時間で遊ぶとか寝るとかではなく、料理するという地に足の着いた生活。料理という世の主婦や横尾さんにとって日常的であるものを、今年最初だから「庖丁始」って特別な言い方をするのは、自分の生活を自分で彩っている感じが、好感が持てます。「都心は」と、「は」を使うことで、自分の住む地域は避難を考えなければいけないほどではないという距離感を出して、状況を分からせるのも見事だと思います。

 

夏井先生が「最初はリズムがぎくしゃくしてるので、高い評価にはしてなかったんです。ゆっくりと丁寧に分析していくと、どんどん評価が上がってくる句でした」とおっしゃっていましたが、それはまさに私が感じる横尾さんそのもの。私はキスブサから沼にハマったのですが、最初は「大丈夫か、この人?」って思っていたのが、「でもなんかこの独特な感じ気になる」になっていって、横尾さんがどうしてそうするのか考えていくうちに「実はすごくいろいろ考えたり気を遣ったりしてる人なんだ…」とわかって、どんどん好きになっていきました。いっぱい回り道して、悔しい思いもして、いろんな俳句を試してここにたどり着いたこと。横尾さんの聖域であるキッチンをテーマにしたこと。定型から外れているけれど、その個性が評価されたこと。本当に本当に横尾さんにしか詠めない、横尾さんらしい俳句で優勝できて感無量です。

 

小学校の国語の時間に自由律俳句を習ったときは、「じゃあ何でもありやん!こんなのズルい!」と思いましたが、横尾さんを追いかけてプレバトを見てきた今なら、無定型の難しさがわかります。五七五の俳句なら音数に合う言葉が見つかったときに「できた」という感触はある。(もちろんそこから言葉を取捨選択するという大きな作業があるけれど。)無定型にはその感触がないので、言葉の選択肢が多すぎて「これでいい」という確信を得るのが難しいのだと思います。コメントを求められれば「優勝いけると思います」と言わなきゃならないけれど、ワイプに映る度に異様なほどまばたきしていた横尾さんは、これなら大丈夫という確信は最後までなかったと思います。この俳句で勝負に出た横尾さんの自分を信じる強さ。そしてそれは、横尾さんの歩いてきたアイドル道に重なります。俳句もマグロも眼鏡も、歌やダンスが苦手って公言することも、これまでのジャニーズの先輩にはいなかった。型通りでない道には不安も苦しみも批判もあったと思うけれど、自分のスタイルを貫いて花開いた横尾さんに勇気と感動をもらいました。

 

年末は紅白も各種特番の収録もあったし、ツアーやアルバムの準備もあるだろうし、ものすごく忙しかったと思うのですが、こんなすばらしい俳句を詠んでNo.1を掴んだ横尾さんのことを誇りに思います。そして1位が発表されて、濱田さんから小声で「横尾、獲ったなあ」って言われても、中田さんが移動する場面だったから声は出さずに腰をかがめたまま立ち上がってお辞儀をしたこと、1位の席に行くときに、先輩方の前を失礼にならないように速足で通り抜けたこと、トロフィーを渡されるときに、濱田さんより上にならないように床に跪いて受け取ったこと、そんな横尾さんを好きになって良かったと心から思います。2020年は絶対にいい年!!横尾担で良かった、キス担で良かったってたくさん思える年になりますように。