「僕を照らすモノ」感想
幼いころにNHK「みんなのうた」で放送されて、今も印象に残っている「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」。天使の像とタイムトラベルを楽しんだ後、曲の最後は「大好きな絵の中に とじこめられた」。子どもの頃は、この歌詞が怖くて怖くて仕方なかったのですが、大人になった今は思う。こんな辛くて悲しい現実にいるより、大好きな絵の中に閉じ込められる方がどんなに幸せなことか・・・。
横尾さんのソロ曲「僕を照らすモノ」のMVは、横尾さんが大好きと公言しているスタジオジブリの「耳をすませば」やジブリ美術館にも作品を提供している井上直久さんとのコラボレーション。きらびやかな絵の世界に入っていく横尾さんを見て、咄嗟に「行かないで!」と思って切なくなってしまったのは、「大好きな絵の中に とじこめられた」という一節が頭の中をよぎったからでしょうか。5月のTVガイドパーソンのインタビューで「40歳になったら静かに暮らしたい」と語っていた横尾さんが、絵の中に消えていく横尾さんと重なりました。
2年ぶりのソロ曲なのに、5年ぶりのソロMVなのに、3分22秒のMV(一般公開Ver)のうち、前半は本人が映っておらず、やっと映ったらシルエットで、顔が映っているのは10秒ぐらい。MVを紹介するときも、「僕なんかより、井上さんの絵を楽しんでください」と言う横尾さん。こんなに自分を見せることにこだわりのない人がアイドルでいるってどういう気持ちなんだろう。でも、先日のライブではこの曲を、ファンのためにしっかり踊って見せてくださいました。しかも3日間ともダンスを変えて。
横尾さんは、歌詞の中で兄たちを「太陽」、自分を「月」と表現しています。そして、メンバーやスタッフさんにも照らしてもらっているとおっしゃっていました。月は太陽に照らされて輝くけれど、誰もが照らされて輝けるわけではない。ちゃんと照り返せるように個性を磨いたからであり、照らし続けてあげたいと思わせるだけの人間性を持ち合わせていたからだと思うのです。
このブログのタイトル「みかんいろの月」は、英語の「cry for the moon」(手に入らないものを欲しがる)という慣用表現から、決して手の届かない存在である横尾さんを「月」に例えてつけました。月って確かに、人間の生活に直接関わる太陽に比べたら存在が薄いかもしれません。しかし、もし地球と引力で引き合う月がなかったら、地球は、自転が8時間になり、強風が吹き荒れ、進化の状態も今とは全く違ったものになっていたそうです。*1そんな大切な役割を果たしていることに気づかれなくても、誰も見ていなくても、夜空に輝き続ける孤高の月。確かに月は横尾さんであると言えるのかもしれません。
研究によると、月は1年で約4cmほど地球から遠ざかっているそうです。今日、夜空に月が光ることは、きっと当たり前ではない奇跡。暗闇で迷う私をどうかこれからも照らしていてください。