みかんいろの月

Kis-My-Ft2の横尾さんがダイスキデス。

最高峰はこの先にあるらしい ―――8月5日横尾さんの俳句に寄せて

8月5日のプレバトは、キスマイから横尾さん、千賀さん、藤ヶ谷さん、玉森さんが登場。こんな特別扱いをしていただけるのも、プレバトで6年にわたって、横尾さんや千賀さんや北山さんが名句を詠んで活躍したり、宮田さんや二階堂さんが謎句を詠んでスタジオを沸かせたりしてきたからこそ。4人でベストアルバムの宣伝もさせていただいて、本当にありがたいことです。

 

そんな記念すべき「キスマイ10周年スペシャル回」で、横尾さんが昇格を賭けて詠んだ俳句がこちら。

 

*****

2021.8.5 お題「ソフトクリーム」

 

八合目の ドラム缶風呂 シャーベット

 

名人7段昇格

季語…シャーベット(夏)

ドラム缶風呂…ドラム缶に水をため、下から火を焚いて温めた風呂

 

 

披露された瞬間、情景が広がりました。険しい山を登ってきて、今夜は八合目の山小屋に泊まる。簡易的なドラム缶風呂につかって、今日一日頑張った体をねぎらう。風呂上がりにシャーベットを食べながら「明日は頂上まで行くぞ」と思いを新たにする…。「八合目」という言葉で山だということはわかるし、八合目で泊まるということは、日帰りできるような低い山ではなくて、険しい山であることもわかる。ドラム缶風呂は日常生活ではまずお目にかかるものではないので、特別感にちょっとわくわくしている気持ちも伝わってくる。シャーベットを食べたくなる気候ということは、大雨とかではないはずで、澄みきった山の空気の中の、満点の星空も見えるようです。形容詞や形容動詞を一つも使っていないのに、八合目まで登ってきて「しんどい」、水温調整ができないドラム缶風呂が「熱い」または「ぬるい」、シャーベットが「冷たい」「甘い」、山の夜風が「涼しい」、夜空が「美しい」、そんな山小屋の夜が「気持ちいい」「楽しい」というたくさんの感覚が、読み手も実感できるような気がしました。

 

八合目「の」としたこところにも、名人らしい工夫を感じました。音数を優先するなら「八合目 ドラム缶風呂 シャーベット」でもよかったはずで、意味も変わらない。「八合目で」も「八合目に」も言える気がする。いろんな選択肢がある中で、「八合目のドラム缶風呂」として「八合目」を修飾語のようにすることで、「俳句らしさ」が成立しているような気がします。限られた時間しかなくて、触れられずに進んでしまいましたが、字余りにしてでも「の」を入れた工夫を、ぜひ聞きたかった!

 

「八合目」というのが秀逸で、これが「九合目」なら「もう大丈夫でしょ」という印象になるし、「六合目」や「七合目」なら「まだまだしんどいな」という印象になる。「八合目」は、「ここまでよくがんばった。やっとてっぺんが見えてきた。でもまだ油断はできないぞ」という位置。山小屋の非日常感も楽しくて、頂上へとはやる気持ちもありながら、登り切ってしまうのがもったいないような気持ちもある。そう思うと「八合目」って今のキスマイの位置みたいな気がします。キスマイはもちろんトップをとるって信じているけれど、でもずっと、頂上にたどり着かずに、「まだ行ける!」「もっとできる!」って言っていてほしいと思ってもいます。頂上に着いてしまったら、あとはもう降りるしかないのだから。

 

横尾さんの俳句の感想を求められて、藤ヶ谷さんは「すっと入ってこない」、玉森さんは「意図がわからない」。私も6年前ならそう言っていたと思う。横尾さんにくっついて、横尾さんの俳句をずっと鑑賞してきて、今日で記念すべき50句目。おかげで横尾さんの俳句が語る情景が、少しはわかるようになってきたのかもしれない。横尾さんの俳句解釈査定特待生10級ぐらいにはなれたかな。10周年目前に「7」段に昇格できたこと、本当に嬉しく思います。永世名人になって句集を出すまで、たぶん私は横尾さんの俳句が語ることを、解釈しつづけるのだと思います。

 

 

※タイトルはKis-My-Ft2「ドキドキでYEEEAAAHHH!!」より