みかんいろの月

Kis-My-Ft2の横尾さんがダイスキデス。

なにがさて私は幸福だったのだ ―――9月15日横尾さんの俳句に寄せて

まだまだ残暑厳しいのにプレバトではもう金秋戦予選。タイトル戦優勝経験者が3人も揃った「死のCブロック」に入ってしまった横尾さんは、果たして予選通過できるのか。ドキドキしながら番組を見ました。

 

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2022.9.15 お題「食欲の秋」

 

丸善の古書フェア 檸檬ケーキの香

 

金秋戦予選Cブロック2位(予選通過)

季語…檸檬(秋)

丸善…大手書店。明治2年に創業し、西洋の本や雑貨を日本に紹介する役割を担った。

 

披露された瞬間の驚きは、過去一番かもしれない。「丸善」「檸檬」といえば、梶井基次郎の短編小説『檸檬』。横尾さんにジブリ以外の本を読んでいるイメージがあまりなかったし、横尾さんの既存の作品を入れ込んだ俳句は「おもひではぽろぽろ 遠い二重虹」ぐらいしか思いつかない。横尾さんの新境地にまずははっとしました。

 

そして「食欲の秋」というテーマを出されて、「読書の秋」から入るこのあまのじゃくさ!人と同じ発想は絶対したくないという強い気持ちを感じます。読書から入ってちゃんと「食欲の秋」に落ち着くという展開も見事。「檸檬」「香」といえば、3年前の金秋戦で詠んだ「天泣のプラチナ通り檸檬の香」も思い出します。「丸善」「檸檬」と格調の高い言葉を使いながら、「読書の秋」と思ったけど、書店に入っているカフェの檸檬ケーキの香りにつられて「食欲の秋」になってしまった、というちょっと笑える状況を句にしたのもすばらしいと思いました。

 

梶井基次郎の『檸檬』を初めて読んだ、幼かった私の感想は「なんだこの話」。主人公の「えたいの知れない不吉な塊」が解消するわけでもないし、丸善の本棚に檸檬を置いていく理由も全然分からない。なぜこれが名作と言われているのだろう…。でも、大人になった今は少しはわかります。どうしようもなく辛い時、悲しい時、ちょっとしたユーモアや想像力が気を紛らわせて、生きる気持ちに向かわせてくれる。檸檬爆弾が爆発して丸善を吹き飛ばすというたわいもない妄想が、主人公の憂鬱を吹き飛ばし、生きる気持ちを支えたのだということが。

 

あんなに執拗(しつこ)かった憂鬱が、そんなものの一顆(いっか)で紛らされる――あるいは不審なことが、逆説的なほんとうであった。それにしても心というやつはなんという不可思議なやつだろう。

梶井基次郎檸檬』より)

 

私にとっての檸檬は間違いなく横尾さんやキスマイです。金秋戦本選がとても楽しみです。